肉食とベジタリアニズム

私、むかし、一時期ベジタリアン生活をしていました。

好きだった人が哲学的ベジタリアンだったり、インドの片田舎に住んで物理的にお肉がなかなか手に入らなかったり、いろいろな要因が重なって、肉食とはなにか? ということを3年ほど真面目に考えていました。青臭いのたいへんけっこう(笑)。

とてももうしわけないことに、動物愛護的観点や博愛主義にはついぞ至りませんでした。ただ、不自然な飼料や効率優先の環境で工場的に生産されたお肉はあんまり食べたくないですし、単純に、肉食は効率が悪い、ということは当時からずっと思っています。

インド二大叙事詩のひとつ「マハーバーラタ」より。太陽神インドラが与えた壺は、一家全員分の食べものが毎日出てくる不思議な壺だった

インドのように12億人も人がいる国で、全員が毎日、動物性タンパク質をふんだんに摂取するのは不可能に近いと思います。

100キロの豆とコメで1,000人がお腹いっぱいになるとします。では同じ100キロの豆とコメを飼料にして家畜を育てたら、いったい何人がお腹いっぱいになるお肉を生産できるでしょうか。

お肉を供給するにはたくさんの飼料と場所と時間が必要で、ならば家畜用の飼料よりも、ヒトが食べるための穀物なり豆なりを生産したほうがよりたくさんの人をお腹いっぱいにできます。

だから食糧生産の効率性という観点からは、お肉はあくまで贅沢品でいいのかなという気がしています。

インドは貧富の差が大きいので、食うや食わずやの経済状況でしかたなく豆と野菜とコメのベジタリアン的食生活を選ばざるを得ないという層もたくさんいます。

一方、信仰に基づく菜食主義者もたくさんいるので、豊かなベジタリアン料理文化が花開いています。その食文化を享受できる限り飽きることはないし、肉がないから寂しいという気分にもなりません。インドでそこそこ中流階級以上のベジタリアン家庭に生まれたら、お肉など食べなくても全然困らないと思います。だからベジタリアンだけど肥満という人もたくさんいます。

しかし私は雑食の日本人。

インドからイギリスに渡ってからもしばらくゆるくベジタリアンをやっていましたが、日本に帰国したら、ま、無理ですね無理! お寿司、美味しいです。

身体を壊したりしたこともあって、あまりこだわらずに食べたいものを食べようというスタンスに落ち着いたのが10年くらい前のこと。最近は育ち盛りの子どもがいることもあって、お肉ももりもり出します(私も絶賛育ち盛りな42歳……)。

先日、友人が私の創業祝いの景気づけに美味しいお肉が食べられるお店のフルコースをご馳走してくれまして。

和牛、サイコー!!! 脂身、サイコー!!! 身体に悪いもの、サイコー!!!

なにか新しいことをやろうというとき、生きて動いていた生き物を食べるって、背徳と高揚が一気にやってきてものすごいパワーになりますね。

反対に、心を落ち着けたいときはしばらくナマグサ抜きをしてみます。ヴィーガン料理とかマクロビオティックとかやっちゃいます。これ、けっこう効きます。

そしてなにより。

数日間、ナマグサを抜いたあとの肉の塊のうまさよ。

かように、肉食とベジタリアニズムのあいだでぐるぐると自由に回遊していきたいと考える次第でございます。