『聡明な女は料理が上手い』

桐島洋子さんが好きです。20代、30代のころ、桐島さんの本を持って旅をしていました。彼女の旅は節約旅でもゴージャス旅でも、潔くて気持ちがいい。

あるとき、「父親が違う子どもを次々産んだビッチの走り」といっている人がいて腰が抜けるほどびっくりしまして、ものの見方や受け取り方は人それぞれと実感したものです。ちなみに父親はぜんぶ同じです……。

私の母親世代にベストセラーになった『聡明な女は料理が上手い』を読んだのはいつだったかもはや記憶にはありません。

「結婚するしないに関わらず、自分の台所を持つべきだ」という冒頭のくだりはずっと私の頭にあり、19歳でひとり暮らしをはじめてささやかなキッチンが我が物になったとき、当時はまだ親がかりの学生ではあったけれど、半分くらいは独立できた気がして(いま思えば金銭的には1/4くらい)、とても誇らしかったのは覚えています。当時の住処にはしょっちゅう誰かが来ては飲み食いしていました。

とりたてて料理がすきなわけでも上手なわけでも残念ながらないのですが、適当な食べ物で空腹を満たすことがどうしてもできず、自分でつくる以外にないので、私にとってキッチンは重要な場所です。

桐島さんが書いておられるように、そこに仲の良い親とはいえ、道具の種類とか、色彩とか、ものの置きかた、片付けかたなど、他人の影響力があってはどうにもうまくいかないのです。

自分が独裁者でいられるキッチンは、心落ち着く場所でもあります。生活が荒れているときはキッチンも荒れ、うまく回っているときは整然ときれい。

子どもが生まれ、すぐ仕事に復帰し、以来ずっと「髪振り乱して」という感じでやっていて、服が毛玉だらけと指摘されても、化粧を半分し忘れて(眉毛が片方だけだった)出社してもハッとする余裕すらなかったけれど、なによりストレスだったのは、キッチンが荒れることでした。

おおざっぱな性格上、毎日ピカピカというわけにはいかないけれど、いまのキッチンはそこそこ片付いていて、身の丈にあった感じがしています。手を抜きつつも毎日必ず家族の食事をつくれるのも、精神的にとてもよいです。

とはいえ、できればお抱えシェフに、ああだ、こうだと事細かに指示してつくってもらいたいものです。スムージーとかローフードのサラダとか、低カロリー高たんぱくなお惣菜とか、身体によさそうでつくるのも後片付けも面倒なものはとくに(笑)。

本日の写真は、桐島洋子さんもお好きだというデリーのホテルのカフェレストラン。格式も料金も高いホテルで、ここに何連泊もするのは勇気がいりますが、デリーに行くときはできる限り一泊はします。自分をリセットできる、好きな場所。

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