インドの一般家庭を訪れると、ほぼ確実に、最初に一杯の水を差し出される。
暑い気候がそういう習慣を生んだのか、客人をもてなすには、とにもかくにも、まずは水。チャイだの茶菓子だのはそのあと出てくるけど、駆けつけ一杯の水がなによりも大切らしい。
さて私はツアーのお客様には常々、
生水は絶対に飲まないでくださいねっ!
と言っているし、お客様だってお腹を壊すことで悪名高いインドで、よもや好き好んで生水を飲もうとは思わないと思う。
睡眠薬強盗だってあるし、よく知らない相手からの飲食物は、どんなに勧められても、どんなによい人たちに見えても、断るのが無難というものだし、皆様にはぜひそうしていただきたい。
しかーし! それとこれとは話が別なのであります。
なんらかの理由でどなたかのお宅にお邪魔したとき、富裕層の豪華マンションであろうとも農村の土間であろうとも、それが5億%相手の好意しかないと分かっている場合は、私は出された水を飲むことにしている。
水の正体は、ボトル入りの水の場合もあるけど、だいたいは「フィルターウォーター」と呼ばれる、水道水や、場所によっては井戸水をろ過したもの。沸かしてある場合もあれば、生水のままであることもある。
とはいえ、そんなことをいちいち聞くのは無粋というもの。飲まずに丁重にお断りしても、まあ外国人だからしかたないよね、という顔をチラリとされるだけで、とくに失礼にもあたらない(ので皆さんは真似しないでね)。
でもね、その水には、ただの水以上の意味があると私は思っていて。
グッと飲み干すと、相手の受け入れかたが180度変わってくる。よそ者の外国人が、スッと相手の懐に入れてもらえるような、素の顔を見せてくれるような、そんな試験紙のような役割を担っているのが、この一杯の水ではないかと思う。
もちろん、飲まないという選択は大いにあるし、私もお客様をお連れしているツアー同行中には、そもそもそういう状況にならないように気をつけている。
でも私、普通のインド人の素の顔を見たいのよね。だから単独の滞在中だったら飲んじゃう。
え、お腹ですか? まあそうですね、けっこう何度も壊してます。笑
水を大切にするインド文化へのリスペクトと心優しい人たちのために一応書いておくと、不衛生だからお腹を壊すというわけではなく、たいていは硬水がお腹に合わなくてギュルギュルくるというやつです。まあ見たからにヤバそうなのは私も滅多に手を出しません。
本日の写真の見どころは、せっかくキメて自撮りしようとしていたのに写り込んだガイド氏。なにやってんだマダムは、という顔してますね。笑