茶トラ逝く

近隣住民に愛されていた茶トラの猫が、不慮の事故で他界したそうです。

サラリーマンだった去年まで、通勤の駅に向かう道すがら、ほぼ毎朝、遭遇した老猫でした。

ものすごく愛想がいいわけではないけれど、道ゆく人がしゃがみこむとおとなしく撫でられてくれる子で、天気のいい休みの日など、小さい子ども連れなどが、ちょっとかまってはまた去っていくのをよく目撃しました。

住宅街の細い路地なのですが、繁華街からの抜け道として車の往来は多く、ときどき場違いなほどのスピードを出して通っていく車もいて、いつもスローな動きの茶トラは、そんな車にやられてしまったようです。

みんな勝手な名前で呼んでいて、てっきり野良だと思っていたのに、どうやら近隣のお宅の外猫だったようです。訃報を知らせる張り紙を見て、ちゃんと本名もあったと知りました。

いつも茶トラがいたアパートの軒先にはびっくりするほどたくさんの花が供えてありました。駅へ向かう近隣住民にも、駅からこの地域の職場に通う人々にも、本当にたくさんの人に愛されていたみたい。

命はいつかはなくなります。先日見かけたばかりだし、いつまでも同じようにそこにいると思っていたけれど。

この数日はきっと、この地域のあちこちのお茶の間で、茶トラの思い出話をしていることでしょう。都心の高層ビルに囲まれた地域で、ふと心和ませてくれたかわいい子でした。

そういえばゴールデンウィークに訪れた千葉の海岸沿いの道を夜、真っ暗な中歩いていたら、ニャーニャー切迫した鳴き声が聞こえました。目をこらしたら、車にはねられて道の真ん中で動けなくなっている猫がいました。足の骨が折れているらしかったけれど、夜だし病院がどこにあるかわからないし、どうしたらよいかわからず、夫が抱き上げて側道に避難させました。あの子、どうしているかな。明かりの少ない車道だからしかたないとはいえ、はねたほうもいたたまれないでしょう。

運転される方、普通の道はもちろんですが、住宅街の狭い抜け道を通るときは、とくに安全運転を心がけていただきたい。

猫にも人にも、穏やかに天寿を全うする権利があります。