ひな祭り、いかがおすごしでしょうか。毎年、雛人形を出し忘れて娘にがっかりされています。
さて私がインドで長らく、もっとも嫌いだったこと。
それは、「マイフレンドのベリーナイスなシルクショップにいかないか」「マイフレンドのホテルはお前が予約したホテルよりもベリーチープでベリーグッド」などとなにも知らない外国人をだまくらかして連れていくという、コミッション(手数料)商売です。
シルクショップには概してほしいものはなく、連れていかれたホテルはさしてよくも安くもなかったりするのに、なぜ見ず知らずのオート三輪タクシードライバーに、ホテル経由で紹介料をくれてやらねばならんのでしょうか。まったくもって、インドってもう! と憤慨するところであります。
私自身はたいがいそのような輩はガン無視するか蹴散らすかしてきたのでひどい目にあったことはありませんし、最近は外国人と認定してもらえないのでますます遠のいていますが、旅行者が最初にインド入りすることが多い北インドのデリーではいまだに悪質なケースが多いと聞きます。
おまけに、殺人や強盗は犯罪だけれど、口先ひとつで高い金を巻き上げるのは「ビジネス」と考えるのがインド商人です。ほんと、油断のならない人々です。
けれどいつからか、買い物はともかくホテルに関しては、ガイドブックをろくすっぽ読まず、あるいはガイドブックがあまり役に立たず、パッと初めて行った街ならば、そのような客引きに身を任せて宿を探すのもアリだなと思うようになりました(でも変なやつもいるから女子は十分すぎる以上に気をつけてね)。
デリーは客引きの手口もボッタクリ具合も剣呑ですが、田舎ならば紹介料込みでもそこまで法外ではないし、思いも寄らないよいホテルに巡り会えたりもしたからです(でもくどいようだが女子は気をつけてね。笑顔禁止。隙は絶対に見せない)。
長距離列車を降りた駅で、バスターミナルで、ワーッと一気に30人くらい押し寄せる客引きも、いったん深呼吸して、キッと目を凝らして面構えが気に入った人物を選べるようになってくると、それほど怖いものでもありません。
あいまいに応答するくらいならガン無視してさっさと立ち去るほうがよいですが、ハラを決めて大勢をさばいてひとりを選べるようになると、ガイドブックの情報がほとんどないような場所ではほんとうに頼りになるものです。
私のインド歴の6割くらいは、そんな抜け目のない北インドの人々との楽しい日々だったのですが、いつからか南インドにも行くようになりまして、価値観のダダ崩れが起きるようになりました。
たとえば、こんなことがありました。
南インドのカルナータカ州のハンピ遺跡に向かう拠点となるホスペットという鉄道駅にて列車を降りました。予定は未定とばかりに、ホテルの予約なんてしていません。送迎の車もきていません。だってどうせ客引きがたくさんいますもの。なんとかなりますでしょう?
と、思っていたら、まさかの。
誰もいなーい!
おーい、客引きさーん!
キョロキョロしても、関心なさそうに通り過ぎていく人ばかり。田舎の、なんにもない駅です。駅の周りもなんにもありません。
オート三輪タクシーも、今日はもう疲れたから帰るべ、てな調子で、まったくやる気がありません。
そうです。いまここに需要があるというのに、供給がないのです。それは困る、ほんとうに困る! お金払うから、私を助けて……。
北に比べると圧倒的にのんびりな南インドではそのような困ったことが多々ありました。
長い前置きでした。
誰もがインターネットを使うようになり、Web広告というものが増えてきたのはいつからでしょう。ちょっと調べ物をしたり、誰かのブログを読んでいるその横に、間に、広告のバナーがちらちら見え隠れします。ポップアップや、どこまでもついてくるスティッキーなものや、その進化は目をみはるばかりです。
しかし私は、どんなに魅力的な、自分にとって必要ななにかの広告がそこにあっても、それをクリックしてその先に進むことが誰かの利益になるということにいつもモヤモヤしていました。だから気になる広告があれば、名前で検索し直してから目的のサイトに行くなどという、面倒臭いことをしてきました。
しかし、です。
インターネットの海の中で、需要と供給のマッチングをする広告というやつは。
あの、北インドの客引きの皆さんと、同じ存在なのではなかろうか。
ときにちょっとウザいけど、知りたい情報が書いてあるサイトのその脇に、関連する商品やサービスの広告があったならば。
貴重な情報をありがとう、という気持ちで、そのバナーを踏んでもよいのではないだろうか。
もちろん、ウィキペディアをコピペしたような量産型の、ページアクセスを上げることだけを目的にした芸能情報サイトなんてダメですよ(読んじゃうけど)。手ぇぬくな世の中なめてんのか真面目に働け、と思います。
でも、駅を出たら誰もいなかったあのインドの片田舎で味わった、マッチングの欠如による絶望感を思いますと。
Web広告、アリかも。
そこから、アフィリエイトを調べ、大手検索エンジンや通販サイトの広告の仕組みを調べ、個人がどこかの広告を請け負うというシステムについて学び始め、はや数ヶ月。
ついに、運営するサイトに広告を入れてみることにしました。ただし、自己基準があります。
そこに書かれている情報が、私や執筆者の独自の経験、取材、調査によるもので、かつ、誰かの役に立つこと。広告は、記事本体の情報料を、いわば「チップ」として受け取るという位置づけにとどめること。実際、審査が厳しいといわれる大手検索エンジンの広告は、そのようなガイドラインを出しています。
インドについては、興味を持つ人が知りたいことが、おそらくあまりガイドブックには書いていないし、巷にもネット上にもあふれる旅行記だけでは不十分。そこの穴を埋められるだけの情報を私は持っていて、仮に未知であっても自力で調べ提供できる素地があります。そのチップとして、1円2円といった小さな額を蓄積していくことができたら、八方よし、みんなハッピーなのではないかと思います。
そんなわけで、ものすごーくニッチかもしれないけれど恒常的に需要がありそうなインドがらみのことについて、サイトでまとめてみようと思っています。準備中。やるといったらやる。
ここにたどり着いたのも、そもそもはあのちょっとウザいインドの客引きのおかげ。客引きサマサマです。人生に必要なことはすべてインドが教えてくれています(笑)