「おーい、きみ、顔おっかないよー」
馴染みの現地ガイド氏がツアー中に何回か言う台詞。
私の大切なお客様に妙なことしたらオマエコロス
近づいてくる、目的不明、正体不明のインド人にガンを飛ばしているときです。
インド歴20年を超えてなにが一番身についたかというと、上位にくるのは「顔相を見る」と「ガンを飛ばす」ではないかと思います。
トータル3秒ほどで目の前の人物をスキャンして善悪を判断する無駄に高度なスキルと、モテ要素からは銀河系ほど離れてしまう「オマエコロス」の無駄に強い目ぢから。
習得してよかったのか悪かったのか分かりませんが、まあ、子どもと旅するときにもこの能力は発揮されます。
さて、『子どもとの旅のこと – 2』では、現在9歳でインド渡航歴5回になった娘の
- インド旅への段階的試み
- 子どもにとってのインドとは
について書きました。
今日は、子連れでインドを旅するときに親として気をつけている点を書いていきます。子連れインドなんてあまり真似する人はいないと思うのですが、子ども基準はおそらく万人のインド旅の参考になるかと思います。
安全について
私の母は、私(7歳)と弟(4歳)を連れてひとりでブラジルからアメリカ経由で帰国する際、アメリカで2週間遊んで行こうとフロリダ州に寄ったそうですが、祖母からは「荷物は忘れてもいいけど子どもは忘れちゃダメよ」と散々いわれたそうです。
いまは私が毎回母から同じことを言われますが、子どもも荷物も忘れたことはありません(笑)。
子連れで旅をしているとあちこちで親切にしてもらえる一方、ストリートチルドレンが集団で誘拐され、臓器売買や児童労働、娼館に売り飛ばされるなどが現実に起きているインド。
我が子がそんな目に遭わないという保証はどこにもありません。
もちろん、滅多にそんなことはないのですが(あってたまるか)、会社員時代に危機管理として日常的に意識していた、Worst-case Scenario(最悪の事態の想定)はインドに限らずどこの国への旅にも必要だと考えています。
日本では登下校や友だち同士の遊びなどは子どもだけで外に出しますが、インドでは24時間密着しています。
たとえばトイレでも、場所の高級場末を問わず、必ず一緒に行きます。外で待っている間になにがあるかわからないので、場所によっては個室にも一緒に入ります。
そして、ひとりのとき以上に、とにかく目立たないこと。超お金持ちでも超貧乏でもない、真ん中くらいの善良な庶民に見えるようにすることを意識しています。
金持ち風なのにメトロやオートリクシャーなど庶民の乗り物に乗ったら目立つし、かといってみすぼらしい出で立ちで貧乏層に間違われてしまったら行く先々で人間の扱いをしてもらえません。
だから可もなく不可もないような、とりたてて目を引かない雰囲気を務めて出すようにしています。
宿泊先について
最初の3回は、設備、サービスなどすべてがストレスのないレベルの5つ星ホテルに宿泊しました。立派なプールがあり、しかも空いていることが多いので、朝夕は泳ぎの特訓をしたり、どこにもいかない休養日を設けてプールサイドでだらだら過ごしたりなどの楽しみもあります。
しかしこれは、
- 毎回1週間以上の旅となると諸々合わせて経費が3桁になってしまう
- 敷地が広く、周囲に手頃なお店がないことが多いため、ちょっとなにか必要なものがあってもすぐに手に入らない
- 荷物を運んだり、水一本補給するのにいちいち人の手を借りないといけない(そしてその度にチップを期待される。多めの額を渡しますけどね)
そんな高級ホテルならではの不便さがあり、また滅多にないことではありますが外国人や富裕層を狙ったテロなども起きており必ずしも超絶対に超安全というわけではないので、徐々にリーズナブル路線に慣らしていくことにしました。
ケーララ州では中流家庭のホームステイ式の宿に滞在したり、デリーでは安宿街の中級ホテルを選んでいます。
いずれもポイントは以下の通り。
- 玄関や入口に常に必ず誰かいて、人の出入りをチェックしていること
- 従業員が宿泊客全員の顔を覚えられる規模であること
- カードキーではなく物理的にかけられる鍵で開閉する部屋であること
- バスタブはなくてよいが浴室のお湯が24時間必ず出ること
- 敷地内に食堂やカフェがあること
- 歩ける範囲に商店街があり、メトロの駅が近い、Uberタクシーと合流しやすいなどの交通の便がよいこと
あと意外と見落としがちですが、火事などが起きた場合の避難経路は、どのレベルの宿泊先でも必ず確認します。外に出るのにあまりに奥まっている部屋はなるべく避けます。
食事について
5つ星ホテルには充実した朝食ビュッフェがあり、インド料理以外の選択肢もたくさんあります。パンケーキやデニッシュ類、果物、オムレツ、ソーセージなど、子どもが好きそうなアイテムも豊富で、衛生面でも問題ないので助かります。
外で食事をするときのポイントは以下の通り。
- 繁盛している店であること(あまりに閑散とした店は食材の回転や衛生面に懸念がある)
- インド料理、中国料理は出来合いではなく都度料理するもので、唐辛子を抜いてもらうなどのリクエストができること
- 欧米系の洋食のチェーン店は子どもが食べられるものがたくさんある
- 移動時など手頃な食事が見つからない場合に備え、非常食は常に携帯(米から作る煎餅はおにぎり代わりになる!)
子連れで食事をする場合は、どうしてもスパイスがきついインド料理の回数が少なくなりがちです。
インド料理好きとしては少々忍耐が必要なところですが、ビュッフェでちょいちょいさりげなくカレーを一品盛ってみたりと慣らしつつ、ときどきはインド料理のお店にも付き合ってもらいます。
辛くないローストチキンが食べられるNando’sというお店は全国で都市部を中心にチェーン展開しており、毎回よく通っています。娘よ母はチキンはもう飽きたので早く慣れようインド料理に……という心境ですが、食べてくれないと困るのでここは慎重に。
その他、ちょっと疲れて外食をしたくないときのために、レトルトパック、フリーズドライの食品を非常食として多めに持っていきます。湯煎やレンジOKの白米パック、お味噌汁、コーンスープなどなど。
あとはご機嫌とりのために、子どもが普段から好きな食べ物を少々。我が家はじゃがりこと梅干があればだいたいは乗り越えられるようです(笑)。
移動について
長距離の移動については、ふたり旅で絶対に目を離せないことを考えると、移動時間が長く、子どもと荷物両方の管理をしなくてはならない列車移動はまだしたことがありません。いつかはインド旅の醍醐味である寝台列車の旅などしてみたいところですが、もうちょっと先かな。
よって都市と都市間は専用車を手配するか、空路を使います。
街中の移動は、最初はホテル付きの車を使っていました。しかしこれも時間あたり日本のハイヤーよりも高い料金設定だったりするので、最近はもっぱらUberタクシーを活用。
Uberドライバーの運転はそこまで荒くはないものの、日本であまり車に乗せないので車酔いすることがままあります。飛行機のシートポケットにあるゲロ袋(正式名称を知らず)はいただいておくとよいです。
ちょっとそこまでの範囲であればオートリクシャーを使うこともありますし、メトロにも乗ります。
サイクルリクシャーは、あまり距離がない移動や暑くて歩きたくないときに、移動手段というよりもアトラクション感覚でごく近距離のみ使います。けっこう楽しんでいるようなのと、身体を張って働くオジサン、オニイサンの背中を見てはなにか感じるところがあるようです。
動物との接触を避ける
先にも書きましたが、一番気をつけているのは、インド産の感染症を集団生活の保育園や学校に持ち帰らないようにすることです。
野生の動物(特に野犬、野猿、たまにいる野豚)や家畜(牛、鶏)には近寄らないことにしています。街中に普通にいるのでつい触りたくなるようですが、そこは止めます。
(でもケーララ州で象使いの象には乗りました……)
英語について
娘には2歳ごろから、早期教育の定番「ディ◯ニー英語システム」をやらせたり、公文に通わせたりしたものの、いまのところあまり上達しているようには見えません。
本人の内気な性格もあって、名前を聞かれても自分からは答えようとはしません。
一番最近の旅でびっくりしたのは、オートリクシャーの値段交渉をしていたら「ママいま100ルピーのを50ルピーにしてもらったんでしょ」と急にいい出したこと。
あの独特のインド英語を聞き取れて偉いなと親バカながら思いました(笑)。
世界は広い
彼女にとってインド体験が今後どのように影響していくのかは分かりません。
いまはただ、世界にはいろいろな境遇の人が住んでいること、肌の色や着ている服や言葉が違う世界があること、そんなことを肌で感じてくれたらいいのかなと思います。
そんなわけで、世間一般におすすめするには諸々のハードルが高いインド旅ですが、今後も母のインド愛と子どもとの時間のため、母娘旅は続いていくことと思います。
世界は広い。