乙女は、比べる。
あの娘よりかわいいか、かわいくないか。はたまた、あの娘よりかわいくない代わりに、頭はいいとか、お金はあるとか。
乙女は、清らかゆえに、たくさんのなかから選ばれなければいけない、と考える。
選んだり、選ばれたり、選ばなかったり、選ばれなかったり。
そうこうするうちに、落としどころを見つけると。
比べることに意味がなくなる。
大勢のなかの序列から、目の前の誰かと自分へ。
無数の平行棒というテトリス構造。
世の中が醜く歪んで見えるフィルタが外れ、優劣でなく一対一の集合体で視界が開いたとき。
私の場合。
ああ、自由を手に入れた。
と思った。
テトリスならスルリと平行棒を落とすことだってできる。
選んだり選ばれたりするための飾りがいらない。
誰かに褒められるためになにかをする必要がない。
自分はどうしたいか。なにが好きか。そこに辿り着くためになにをしたらいいのか。
拍手喝采や賞賛は、あれば嬉しい。
でもゴールじゃない。
手に入れたいのは、一対一の深さ。
優劣の頂点にはあんまり意味がない。
清らかさは未熟さでもある。
乙女期は誰にでもあるが、そのまま終えるのは、あまりに惜しい。
乙女、散る前に咲け。
私は花が見たい。